レイノルズ数


レイノルズ数

与えられた数値法によって正確に計算できる、レイノルズ数が最大の流れと最小の流れは何か。この質問にはさまざまな答えがあり、多くの技術的問題と同様に、この多様な答えは、答えを提示するにあたっての仮定から生じます。

ここでは、レイノルズ数RをR=LU/νと定義します。LとUは流れの特性長と特性速度、νは流体の動粘度です。無次元レイノルズ数が粘性効果に対する慣性の重要性を測定するものです。高レイノルズ数では、流れは乱流になり、質的に異なる挙動を示す可能性があります。

一般的に、考慮するべき最も重要な限界は、高レイノルズ数のものです。これは、層流が乱流に変化すること、または境界層が表面から剥離する位置に依存する物体の揚力と抗力を、計算を使用して予測できる限界です。これらを含めた、流れに対する粘性応力の相対的な効果を正確にシミュレーションすることが重要な流動過程では、計算において期待できる精度のレベルがある程度わかっていると便利です。

CFD (computational fluid dynamics: 数値流体力学)にレイノルズ数の限界が存在するのは、CFDのほとんどの手法において、計算を安定させるには、計算要素内で何らかの数値的平滑化や均質化が必要だからです。粘性は、流れの変動を平滑化するための物理的メカニズムであるため、数値的平滑化と物理的平滑化を区別する問題が発生する可能性があります。このことは、粘性応力の特に正確な推定が必要な臨界レイノルズ数の状況になった場合に、特に重要です。

高レイノルズ数の限界 – 物理的論証

簡単な物理的論証を使用して、流れを正確に表現するために必要な計算要件(分解能など)を推定できます。この論証は、流れの領域が複数の小さい要素に細分化されると、1つの要素内のすべての流量がゆっくりと変動するという仮定に基づいています。この仮定には、各要素の量の平均値が、要素内の実際の値をかなり正確に近似したものであるという意味合いがあります。

要素内の変動速度を遅くするには、要素サイズのスケールで流れのレイノルズ数が小さくなければなりません。たとえば、1次でRd=dx•du/ν ≤ 1.0などです。この式で、dxとduは、要素の特性長と特性速度のスケールです。この物理的要件、要素内の流れの滑らかさ(このスケールの、低レイノルズ数の層流)を使用して、正確な数値分解に必要な要素のサイズを定義できます。

上記の不等式は、関係式L=NdxおよびU=Nduによって巨視的レイノルズ数に変換でき、これからR ≤ N2が導き出されます。つまり、個々の要素のスケールでの滑らかな流れの物理的精度の要件は、正確な計算を期待できる最大レイノルズ数がおよそNN2 (Nは特性長Lの分解に使用される要素の数)であるということを暗示しています。

一般的なアプリケーションでは、Nの範囲は多くの場合10~20です。つまり、正確な計算を行うための最大レイノルズ数は400程度だということです。それほど大きい数値ではありません。この結果についてコメントする前に、正確なレイノルズ数計算の限界を推定するための別のアプローチを試してみることをお勧めします。

高レイノルズ数の限界 – 数値的論証

数値近似によって計算に導入される粘性のような平滑化の量は、打ち切り誤差から推定できます。これは、要素サイズ(該当する場合はタイムステップサイズ)の累乗の差分近似でタイラー級数展開を行うという考え方です。もちろん、無矛盾の近似には、最低次の項として、最初に近似されていた偏微分方程式が含まれている必要があります。

すぐ上の次数は、通常は、拡散の特性を持つ項(2次空間微分係数)です。これらの項の係数を粘性の係数と比較すると、粘性効果が正確に計算されなくなる時期を推定できます。

1次数値近似(移流のドナーセルや風上法など)の場合は、項の比率(1未満が高精度)によって、R ≤ 2Nという基準が導き出されます。2次近似の結果はR ≤ N2となり、「物理的論証」で得られた結果と同じです。

これらの関係式の右側を掛け算する小さい因数があり、これらは使用する数値近似によって異なりますが、Nに対する基本的な依存性は変わりません。2次の手法が1次の手法より優れているのは明らかですが、結果はあまり思わしくありません。Nを大きくする場合、つまり、極端に大きい格子を扱う場合を除いて、正確に計算できる最大レイノルズ数は、ごく限られているようです。

高レイノルズ数に関する一般的見解

これらの推定は、最初は思わしくありませんが、多くの場合はあまり問題になりません。第一に、ほとんどの問題で、粘性応力の正確な処理は不要です。こうした問題に関しては、高レイノルズ数には、粘性効果が重要ではないという本意があります。

完全な乱流になるのに十分なほど流れのレイノルズ数が大きい場合は、乱流によって生じる運動量混合により、平均流れの有効レイノルズ数が100未満になり、分解可能なスケールの範囲内に十分に収まります。もちろん、これは、このような乱流を表現するのに適した乱流モデルが使用可能であることを前提としています。

最後に、粘性効果の正確な知識に依存する流れ特性が必要な場合は、その効果を人為的な方法で発生させることが可能な場合もあります。たとえば、風洞では、トリップワイヤを使用して流れを分離させ、レイノルズ数が類似していない問題に対処できる場合があります。同様の処理を、風洞の数値シミュレーションにも追加できます。

要するに、CFDの手法を使用すると、高レイノルズ数の流れを計算できますが、数値誤差によって物理的効果が思わしくなくなる状況を警戒するかどうかは、モデラ次第だということです。

低レイノルズ数の限界

低レイノルズ数では、限界は、精度の限界ではなく、計算を完了するまでに必要な計算時間に基づく限界です。粘性応力の項に陽的数値近似を使用した場合は、数値の安定性を維持するためのタイムステップのサイズに限界があります。この限界は、本質的に、粘性に起因する運動量の変化は、1つのタイムステップ内のおよそ1つの要素を超えて伝搬することはないということを示しています。単純な2次元のケースでは、この限界はνdt ≤ dx2/4です。

これは、T=MdtおよびTU=Lという対応を作成することにより、レイノルズ数を含む式に変形できます。つまり、流れの特性時間は、速度Uの流体が距離Lを移動する時間であり、時間Tを分解するタイムステップの数はMです。これらの関係式により、安定条件はM = 4N2/Rとなります。

この結果で重要なことは、MがRに反比例して増加することです。レイノルズ数が非常に小さい流れの場合、陽的数値法には非常に多数のタイムステップが必要な場合があり、この数は、分解能の上昇に従って急速に増加します。低レイノルズ数の限界を最も効果的に排除する方法は、陰的数値法を使用して粘性応力を評価することです。

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