FLOW-3D European Users Conference 2019のご報告


FLOW-3D European Users Conference 2019のご報告(2019年6月3日~5日)

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今年のEUCユーザカンファレンスは6/3~6/5の3日間、イタリア・ミラノのSheraton DIANAホテルで開催されました。弊社、フローサイエンスジャパンからは丸湾・馬場・中村・長尾が参加いたしました。

アリタリア航空を利用すると成田空港から直行便でマルペンサ空港(ミラノ)まで約12時間になります。到着は夕方6時頃でしたがまだまだ陽射しは高く、空気が爽やかな夏の気候という感じでした。食事は主に、ピザやパスタ系が主流で特にトマトソース煮、ミート&チーズをパスタで巻いた一品料理は絶品でした。

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ヨーロッパ各国から多数のFLOW-3D / FLOW-3D CASTユーザ様が参加されていました。ユーザカンファレンス前日には、FLOW-3Dのセットアップ内容および便利機能の紹介、FLOW SIGHTのポスト処理に関するトレーニングが行われました。

2日間に渡るユーザカンファレンスでは、FLOW-3D Ver12.0のモデル新機能等の説明に加え、鋳造と水理の2つのセッションに分かれてユーザ発表が行われました。カンファレンス初日の夕方頃から約2時間、ミラノ市内を循環する観光バスにカンファレンス参加者全員で乗車し、市内の観光をしました。ミラノの街並みは人々で賑わっており古風&個性的な建造物と人物像が象徴された街並みでした。

6月3日 半日トレーニング

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この日は、米国Flow Science社(以下、FSI社)によるトレーニングがありました。演習の内容は、例題のシミュレーションを元に、セットアップの内容を確認しFLOW SIGHTで結果ファイルをテキスト形式で読み込む操作まで行いました。

FLOW-3Dの便利機能として、STLファイルを無料で修正できるqAdmesh機能およびシミュレーションデータの全設定の保存が可能なTemplate simulations(FLOW-3D only)機能、物性値の保存が可能なDatabase機能等、セットアップの高速化に繋がる機能の紹介がありました。また、後半部分ではGUI上でバッチプロセス処理に関する方法について紹介されました。

6月4日 ユーザーズカンファレンス1日目

一般セッション

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まずは、FSI社のAmir Isfahani社長からEUC2019の開会の挨拶があり、2日間のカンファレンスが始まりました。

続いてFSI社 John Wendelbo氏よりFLOW-3D Ver.12.0のリリース内容に関して、シミュレーション設定からポスト処理の結果までの一連の作業を合理化するための重要なグラフィカルインタフェイスの開発の特徴や、インタフェイスの主要なオプション機能の可視性を改善についての発表がありました。

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ArianeGroup社(ドイツ)のPhilipp Behuruzi氏より宇宙産業にて重要なロケットタンク内の極低温な流体のスロッシングによる物質の相変化の影響およびボイルオフ率を予測するための相変化モデルを元にこれまでの基礎実験や数値的な状況についてご発表いただきました。

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次のプレゼンターは、ロッシュ・ダイアグノスティック社(ドイツ)のJulien Boeuf氏です。新しい高度な染色システムを開発するために、サンプルを含むガラス製の顕微鏡面を使い捨てマイクロインディクスセルデバイスに挿入する新しいプラットフォームの検討を実施し、実験とFLOW-3Dにより作成したモデルとの妥当性の比較検討および流体交換プロセスの設計についての検討事項に関してご発表いただきました。

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弊社からは、丸湾が発表を行いました。溶接や積層造形プロセスのシミュレーションをサポートするFLOW-3Dモジュール機能の拡張を目的とした、WELDモジュールとDEMモジュールおよび構造解析インタフェイスF.SAIの新機能や将来の開発についての紹介、また選択的レーザ溶接(SLM)やレーザ金属堆積(LMD)の用途について報告いたしました。

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Plastic Omnium社(フランス)のPhilippe Georis氏より、燃料フィラーパイプの設計や製造プロセスの背景を元にFLOW-3Dと市販のCADソフトウェアを組み合わせた最適化ツールを使用した、「最適なフィラーパイプ」を自動的にレイアウトする方法についてご発表いただきました。

鋳造セッション

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昼食後は各セッション(鋳造と水理)に分かれて、ユーザ発表がありました。今回は鋳造セッションの報告を行います。

最初にFSI社Michael Barkhudarov副社長から、FLOW-3D CAST Ver.5.1のモデリング機能の拡張について発表がありました。新しい合金凝固モデルにおけるミクロ組織と伸びおよび極限引張強さのような機械的性質の予測、プロセスワークスペース、重力砂型鋳造プロセス等が新機能として追加されるようです。

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続いてXC Engineering社(イタリア代理店)のStefano Mascetti氏からのご発表です。現在電気自動車のバッテリーコストを低下し長距離移動を可能にするための軽量化された材料の需要が高まっています。そのためアルミ鋳造工場では、製品開発の初期段階において分析を実施し軽量鋳造オプションの実現可能性を評価しています。本発表では鋳造部品の挙動について分析することによりHPDCプロセスシミュレーションの実現可能性を調査するとともに、プロトタイピングおよび金型コストを防ぐ方法についてご発表いただきました。

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Federal Mogul Nuremberg社(ドイツ)のFlorian Wirth氏より、内燃機関におけるピストンの熱的挙動に関して、冷却チャネルを有するピストンの動作をシミュレートする方法および1流体・表面張力モデルを使用した2相計算法との計算速度の比較についてご発表いただきました。また、開発されたモデルによる標準的なピストン設計についてもご説明いただきました。

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カンファレンス初日の最後の登壇は、パドヴァ大学(イタリア)のGiulio Timelli氏からの発表です。合金の流動性は金型の充填に直接的な影響を及ぼすためAl鋳造プロセスにとって重要な問題です。しかしながら、流動性と金型充填の実験データが存在しないため、本研究を通して流域の試験中の特定のプロセス変数の影響について、アルキメデススパイラル試験を用いて詳細に分析しました。その結果、炉内での保持温度と注湯槽内での液体の温度との間の差は、容器内での金属の保持時間、すなわち実験の再現性に影響を及ぼすことが明らかとなった事例をご紹介されていました。

6月5日 ユーザーズカンファレンス2日目

鋳造セッション

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カンファレンス2日目は、昨日の各セッション(鋳造と水理)に分かれてのユーザ発表の続きから始まりました。引き続き、鋳造セッションの報告を行います。

最初のプレゼンターはFlow Science Deutschland(ドイツ)のMalte Leonhard氏です。凝固収縮による空洞を防ぐための金型に組み込まれた容器(フィーダー)に関する発表がありました。また、FLOW-3Dによる点火のモデル化および各グリッドセルで個別に時間依存の熱放出を可能とする新しいモデルについて紹介されていました。

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続くプレゼンターはCM社(イタリア)のGabriele Taricco氏です。金型の応力および変形解析は重力鋳造プロセスで非常に重要であるとともに充填作業中における金属漏洩や鋳造部品の欠陥の予測が可能です。本研究では、金型に加わる応力の緩和を目的とし、最新バージョンのFLOW-3D CASTを使用して、全サイクル中の金型の熱発生を計算し、流体構造相互作用モデルを使用して応力および変形場を決定する方法についてご発表いただきました。

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FORM S.r.l.(イタリア)のDaniele Grassvaro氏より、最適化ソフトウェアとしてFLOW-3D CASTと組み合わせて使用するIMPROVEitに関してご発表いただきました。また、本発表では真空と最小限のスプレーを適用して、薄肉鋳物の供給システム、オーバーフローとベント、およびアルミニウムとマグネシウムダイの冷却チャネルを最適化した結果についてご説明いただきました。

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オットー・フォン・ゲーリケ大学(ドイツ)のEric Riedel氏より、アルミニウムを合金に鋳造する際の超音波処理を研究し、これまでのプロセスに関する問題点およびFLOW-3Dを用いた超音波処理のプロセスシミュレーションの基本モデルの設定方法についてご発表いただきました。また今後の展望として、鋳物の評価と照らし合わせ計算結果の妥当性の調査および鋳物の微細構造に及ぼす空洞の影響に関する数値的アプローチ方法についてもご発表いただきました。

 

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鋳造セッションの最後は、シエナ大学(イタリア)のAndrea Bernadoni氏より、レオナルド・ダ・ヴィンチの馬および肖像画、これまでの歴史についてご紹介いただくとともに、馬をモデル化したキャスティングに関するシミュレーション結果についてご発表いただきました。

 

一般セッション

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昼食後、再び各セッションが合流して発表が始まりました。FSI社Michael Barkhudarov副社長からFLOW-3Dの次期バージョンの新機能についての発表がありました。激しい流れ場や水跳ね等の自由表面追跡ソリューションの忠実度を大幅に向上させたラグランジュ粒子とVOFを組み合わせた方法の紹介、溶解粒子を組み合わせた化学モデル・多合金凝固モデルの拡張内容等の説明がありました。

 

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2番目のプレゼンターは、FCA社のFrancesco Fortunato氏です。タンクフィリングシミュレーションを実施する上で、モデル構築が容易で正確な結果を提供するFLOW-3Dは必要不可欠である反面、完全な2流体シミュレーションがしばし不安定で非常に時間を要する点やメッシュブロックインタフェイスによる安定性問題を克服する目的でFLOW-3Dに加えDFSS方法論(Design for Six Sigma)を用いたセットアップの手法や検証結果についてご発表いただきました。

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ArianeGroup社(ドイツ)のFrancesco De Rose氏からは、上段低温ガス反応制御推進システムのモデリングについてのご発表です。宇宙船において極低温液体を使用する際に、推進剤スロッシングによるタンク内の熱的条件や圧力変動によるベントガス推力への影響が懸念されています。これらの複雑な現象を対処できるモデリングツールに必要な項目をご紹介いただきました。また、宇宙船の挙動を正確に予測するうえで、高度な実形状モデルを表すことができる解析ツールの必要性やCFD解析ツール(Final Phase Simulator)構造の概要についてご説明いただきました。

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FHNW大学(スイス)のDonato Rubinetti氏よりFLOW-3Dを用いた穀物サイロの規模で気固混合物をモデル化し、数値的に計算する手法として3つのアプローチの調査方法(Granular Flowインタフェイスの使用、堆積洗堀モデル、粘性流モデル)をご発表いただきました。

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続くプレゼンターは、Protesa S.p.A社(イタリア)のValentina Virgilli氏です。トイレの設計・製造方法に関して、実験室での試験期間を大幅に削減し試験速度の向上を目指す上でCFDシミュレーションが必要不可欠であり、解析結果の検証により顧客が要望する動作に達する最適化された解の発見についてご発表いただきました。

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ミズーリ大学(アメリカ)のNicholas Mattia氏より、人体内の体液バランスを維持するのに重要な役割を果たすリンパ管内の流体力学的挙動の調査を目的とし、FLOW-3Dを用いた単一のリンパ管のシミュレーション結果と実験的測定結果との妥当性についてご発表いただきました。

2日間にわたるユーザ発表の最後を締めるのは、J-ROM社(イスラエル代理店)のShmuel Olek氏です。ドロップオンデマンドタイプのプリントヘッドは圧電プッシュモードを含み膜の作用に応じて圧力隆起を生成し個々の液滴を放出させます。プリントヘッドの圧電部品とメンブレン部品は物理的にモデル化されておらず、方形圧力パルスがピエゾ電気部品の領域内の支持部品に印加されます。こちらの背景をもとにTruVOF法を用いたシミュレーション結果と実験データの比較に関する事例のご紹介がありました。

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ユーザカンファレンスの全発表が終了した後、水理・鋳造の各セッションからベストプレゼンテーションが選出されました。鋳造セッションからはFORM S.r.l.(イタリア)のDaniele Grassvaro氏、水理セッションからはIbis Group社のSteve Saunders氏が受賞されました。今回のカンファレンスでは多数のユーザ様から発表者への質疑応答が行われ、非常に有意義な会合でした。今後、カンファレンスで得られた情報が日本のユーザの皆様のお役に立てましたら幸いに存じます。

文責:技術部 長尾

 

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